【2018年5月30日ニュース】大高氏第三回公判の詳しい状況

警備法廷

 2018年5月28日の午後1時30分から、東京地方裁判所429号法廷で、大高正二氏不退去罪事件の第三回公判が開かれました。あらかじめ、大高氏は警備法廷を控えるよう裁判所に要請し、弁護側は5月23日に大高氏の意に沿って、上申書を提出しておりましたが、裁判所側は方針を変えず、傍聴券の配布、手荷物の強制預かり、ボディーチェック、法廷内の警備職員の配置という警備法廷を改めませんでした。警備法廷は傍聴者にいろいろな被害を及ぼしました。たとえば、ある傍聴希望者は喉の調子が悪かったのか、うがい薬を小さなペットボトルに入れていたのですが、警備員に取り上げられ、抗議したところ、入廷が非常に遅れたうえ、うがい薬を持ち込めませんでした。警備法廷の目的は不明ですが、医学の知識があるとも思えない警備職員が、薬を取り上げるというのは、問題ではないでしょうか。また、ある傍聴者は、公判の途中で、どうしても電話をしなければならない用事を思い出し、いったん、外に出て、強制預かりになっていた荷物の携帯電話を返してもらって用事を済ませたところ、再入廷を断られたということです。これで、公開法廷といえるのでしょうか。

大高氏の不出廷に関する議論と開廷強行

 このような裁判所の方針を事前に知らされた大高氏は、この日も出廷を拒否しました。これについて、予定時刻の13時半になり、傍聴人がすべて着席したあとで、裁判長が次のように説明しました。(不当に長期勾留されている)大高氏には、公判期日が知らされており、当日、出廷するように看守が命令したが、彼は(違法な警備法廷をとがめて)、出廷を拒否した。職員数人が大高氏を強制的に連行しようとしたが、大高氏は抵抗したので、大高氏は出廷しないということです。このことをもって、裁判長は刑事訴訟法286条の2の規定が適用され、被告人の出廷しない欠席裁判を開くことができるとし、開廷宣言をしようとしました。もともと、刑事訴訟法では、286条で、被告人の出廷しない法廷は開くことができないとなっていたのですが、2005年に286条の2が追加され、勾留されている被告人が召喚を受け、正当な理由がなく出頭を拒否する場合には、欠席裁判を許すということになったという経過があります。裁判長はこの条文を意識して、大高氏の召喚に関する説明をして、同条の規定を適用できるとしているわけです。

 これについて、長谷川弁護士が発言を求め、次のように話しました。第一に、大高氏の出廷拒否の状況は、拘置所の報告書に書いてあるだけで、最近の公文書の改ざんの状況から見ても、内容が正しいかどうか確認できない。第二に、大高氏の出廷拒否は正当な理由があるので、同条は適用できないので、公判手続きに入るべきではない。また萩尾弁護士も発言し、裁判の公開と傍聴は、国民・人民が権力装置である裁判所を監視するためのものであり、民主主義の根幹であるのに、警備法廷では裁判所配下の警備員が傍聴人を監視するという本末転倒の状況になっており、法廷の正当性は失われている。これを改めずに欠席裁判を行うことは、日本国憲法が定めている裁判を受ける権利を侵害するものだと指摘しました。

 この議論は第2回公判でも行われたものですが、前回と同様、裁判長は弁護人の主張を退けて、開廷を宣言しました。

警備法廷の理由についての質疑

 この事態に、長谷川弁護士は、警備法廷をやめてくれれば、正常な公判が行えるのに、なぜ、警備法廷を行うのかと裁判長に聞きました。裁判長は、それが必要だからと私が判断するからだと、回答し、また、裁判長の法廷警察権に基づくものだとも述べました。長谷川弁護士は、それでは答えになっていない、裁判長が法廷警察権を有するといっても、どのような場合にも無制限に警備法廷をおこなっていいということではない。現在のこの法廷を警備法廷にする理由を聞いているのですと質問したところ、裁判長は答える必要はないと突っぱねました。

 弁護側は、本日は大高氏の退去命令を執行した裁判所職員のアマミヤダイゴ氏の証人尋問が予定されているが、このような重要な証人尋問を大高氏のいない場所で行うことは問題である、このまま公判を続行するのならば、われわれはそのような法廷の場にいることはできないので、引き取らせてもらいたいと述べました。裁判長は、弁護人の退去を許さないと、在籍を命令しました。

検事の証拠説明と証人尋問の主尋問

 手続きが進められ、検事の証拠説明が行われました。検事は、事件の起こった12月7日の夕方に、警察官の実況見分が行われたこと、それに、アマミヤダイゴ氏が立ち会ったこと、建物の構造の説明と、構外退去命令執行時に「犯人」の大高氏がどこにいたかというようなことを説明しました。ここで、検事は何度か「犯人」という言葉で大高氏を形容しておりましたが、無罪推定の原則を蹂躙しており、問題ではないかと思います。

 庁舎管理規程なども証拠提出しているようですが、傍聴だけでは詳細はわかりませんでした。

 次に、証人尋問のためにアマミヤダイゴ氏が部屋に入り、証人宣誓を行いました。弁護側は証言に移ることに抵抗しましたが、却下され、検事が主尋問を行いました。それによると、証人は東京地方裁判所の事務局総務課の課長補佐で、担当は広報と警備であるということです。警備とは、退去命令執行を含み、その根拠は、裁判所庁舎管理規程に基づき、命令の権限は、元の権限者の地方裁判所所長から代位されるということです。

 当日は、つまり2017年12月7日は、大高氏が退去命令を受けた618号法廷の周囲で、早朝から警備体制が敷かれており、その人員は証人を含む総務課の職員2名と、民事訟廷の係りの2名で、警備体制の目的は、W氏という「要注意人物」がその区域に入ることを阻止することでした。

 午前10時少し前にW氏が来たので、命令書を見せて、「あなたはこの区域に立ち入ってはいけない」と言い渡したところ、その命令書を見て、W氏が、印鑑がないのでこれは無効だというようなことを言い、言い合いになったということです。そこに、大高氏が通りかかり、W氏に説明を聞き、いきなり大声で、

  • 立ち入りを禁止するなんて裁判所はおかしい、
  • 最高裁判所も開かれた法廷といっている、
  • 命令書に印鑑がないのだから無効だ、
  • こんなことは憲法違反だ

というようなことを言い出したということです。声の大きさは別にして、内容はそれぞれもっともな正論と思えるのですが、アマミヤ氏は、声の大きさだけに着目したようで、大声をださないでくださいと大高氏に言ったそうですが、大高氏は聞き入れず、興奮していたのか、法廷の前の廊下を歩き回りながら、裁判所はおかしいというようなことを話していたそうです。そこで、その場に来た総務課長が、「所長に退去命令の許可を取ってくる」といって、どこかに行き、やがて、許可を取ったという連絡が入り、大高氏に退去命令を出したということです。大高氏は、「何が退去命令だ、ふざけるな」というようなことを言い、アマミヤ氏は、「あなたには退去命令が出されたので、すぐに退去しなければ不退去罪になる」と説明したが、大高氏は聞き入れず、「俺は傍聴に来ているのだ、いまから618号法廷の傍聴をする」と同法廷に入ろうとしたので、アマミヤ氏はそれを防ぐために大高氏の前に立ちはだかり、その間に110番通報し、制服警官と私服警官が何人もやってきて、大高氏を連行していったということです。なお、アマミヤ氏は大高氏に対して手を出すようなことはしなかったので、大高氏が前に進んでくるのを阻止しようとして立ちはだかったときに、接触しそうになり、転んだということです。ただし、これは大高氏が暴力をふるったというようなことではなく、大高氏が歩いている方向にアマミヤ氏が立ちはだかったことの結果であったということでした。

反対尋問

 反対尋問で、まず長谷川弁護士が立ち、証人の職務経歴や、庁舎の警備について聞き、アマミヤ氏は庁舎管理規程を引用しながら、警備をどのように行うかを説明しました。そこで、長谷川弁護士は、庁舎管理規程は裁判所の内規のはずだが、内規がなぜ一般市民に対する規制の根拠になるのかというようなことを尋ねました。これは、大高氏が以前から問題にしていたことで、証人がどう考えているのか聞きたかったのですが、検事が口をはさみ、事件と関係がないとして質問をやめさせました。事件と関係がないというのは、納得できない判断です。

 次に、弁護士は、勾留状に明記されている大高氏が「要注意人物としてあらかじめ把握されていた」という記述に触れ、要注意人物というのはだれがどこで決めているのですか、裁判所で正式に決定しているものですかと聞きました。アマミヤ氏は、正式な決定ではなく、警備を担当するスタッフの間で情報交換しているものだと答えました。そこで、弁護士が、そのように情報交換されている要注意人物は、何人ぐらいいるのですかと聞きました。大変興味深い質問でしたが、ここでも検事が事件に関係ないと割り込んで、質問に答えませんでした。残念なことです。

 次に、事件の日の警備体制がいつから敷かれたのかについて聞いたところ、9時20分ごろから始まったと答えました。W氏が庁舎に入ったときに、証人が連絡を受けたのかとの質問には、庁舎の一階にも警備職員がいて、W氏が来たことを無線で連絡を受けたと答えました。大高氏については、そのような連絡はあったのかとの質問には、なかったと答えたようですが、大高氏は庁舎内で録音をする要注意人物として認識していたと証言しました。実際に大高氏が録音したことはあるのかとの質問には、そのようなことがあったとは自分は聞いていないと答えました。

 次にW氏に対する立ち入り禁止命令書について、これを発行したのは証人ですかと聞き、証人ではなく民事訟廷の係で発行したものだということでした。この命令書には印鑑がないということで、正式文書なのかどうかについては、正式に保存される文書ではないと答えましたが、正式文書ではあると答えはやや混乱していました。

 大高氏の逮捕について、裁判所が要請したものか、警察官が決定したのかとの質問については、警察官が独自に判断したもので、自分はそのような要請を行っていないということでした。

 次に、弁護側が提出する証拠の防犯カメラの写真のようなものを示し、質問をいくつか行いましたが、傍聴席から写真が見えないので、内容はよく理解できないものでした。 それに関連し、アマミヤ氏が大高氏の618号法廷への入室を阻んだことについて、このまま放置すれば危機管理上最悪の事態になると思ったので、阻止したのだと述べたことが印象的でした。これについては、裁判官も気にかかったと思え、向かって左側の裁判官が、証人に対し、「危機管理上最悪の事態というのは、もっと具体的に言ってください」と促しました。アマミヤ氏は、法廷内で大声を出すとかそのようなことだと答えました。ちぐはぐな発言だったと思います。

弁護側の方針

 裁判長が検事に確認したところ、検事の立証行為は、これですべてだということでした。これには、弁護人も少し驚いたということです。話題は次回以降の公判における弁護側の行為についての相談になり、弁護側は

  1. 防犯画像の証拠提出
  2. 防犯映像の証拠提出
  3. W氏の証人尋問

を請求しました。映像の確認には、映写設備のある法廷が必要であるので、別の法廷にしてほしいと要請しましたが、裁判長は警備法廷は絶対に譲れないが映像の映写については考慮すると答えました。

 これらについて、検事は、立証趣旨がよく判らないと質問し、長谷川弁護士は、大高氏の対応が普通の振る舞いであり、退去命令や不退去罪の逮捕の対象になるようなものではないことを立証するものだと答えました。

 裁判長は、次回の公判には大高氏が出廷することを要請し、できれば被告人の尋問も行いたいと希望しましたが、弁護側は大高氏の意向は警備法廷では出たくないということなので、難しいが、説得してみると答えました。

次回期日など

 最後に次回期日を決めることになり、6月27日(水)午後1時半から429号法廷で行うとし、閉廷になりました。なお、裁判長は、警備法廷に関連してか、本日の傍聴人の態度は問題がなかったと指摘しました。小生はいつもと変わったところはなかったと感じますが、そういうことだそうです。

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